Hi-Beat 36000 80 Hours

Caliber 9SA5

2020年、グランドセイコーは、10振動にして80時間の連続駆動を実現しながら、「快適な使い心地と上質な感性価値を高次元で両立する」ことを目指した史上最高の機械式ムーブメント「キャリバー9SA5」を生み出しました。

ムーブメント仕様

巻上方式 自動巻(手巻つき)
静的精度*1 平均日差+5~-3秒
携帯精度 日差+8~-1秒
持続時間(最大巻上時) 最大巻上時約80時間
振動数 36,000振動/時(10振動/秒)
石数 47石
その他機能 - デュアルインパルス脱進機
- ツインバレル
- 瞬間日送り機構
  1. グランドセイコー独自の規格に基づき、工場出荷前にムーブメント単体の状態で、6姿勢差・3温度差の条件下で測定した場合の精度です。実際にお客様がご使用になる環境下での精度(携帯精度)とは異なります。また、メカニカルモデルの特性上、ご使用になる条件(携帯時間、温度、腕の動き、強いショックや振動)によっては、前記の精度の範囲を超える場合があります。

グランドセイコー史上最高の機械式ムーブメントが誕生

新たな“鼓動”を刻む「キャリバー9SA5」

機械式時計の聖地・グランドセイコースタジオ雫石では職人たちが、脈々と受け継がれてきた「実用面でのたゆまぬ進化」というグランドセイコーの哲学を体現するべく、高精度、高品質を果てしなく追求し続け、高度な設計・製造・加工技術・組立調整技術を積み上げてきました。キャリバー9SA5は、その匠の技と先進技術を結集し実現した機械式ムーブメントです。新たに開発した「デュアルインパルス脱進機」と「ツインバレル」を採用することによって、80時間の長時間持続を実現しながら、従来よりも慣性モーメントの大きいてんぷの搭載を実現し、安定した精度を適えました。また、部品精度の耐久性は、表輪列の歯車への負担を減らす構造によって確保しています。

新しいムーブメントを生み出すにあたって、技術陣は新たな解析技術を用いて8万通りを超えるひげぜんまいの形状から精度への影響を予測。その中から最適な形状を見出すことに成功しました。それが、9Sメカニカルムーブメントで初めて採用された独自の「巻上ひげ」です。これによって、振り角に応じて変化する歩度の度合い、つまり、等時性の変化を最小限に抑えながら、時計の進み・遅れの調整に、緩急針のない「フリースプラング」方式を採用することで、より高い精度を長期間、安定的に維持することを可能にしています。

動力ぜんまいの力の伝達効率を飛躍的に高めた「デュアルインパルス脱進機」

「デュアルインパルス脱進機」は、がんぎ車から直接てんぷに力を伝える「直接衝撃」と従来の「間接衝撃」を組み合わせることで、動力ぜんまいの力をより高い効率で、てんぷに伝達できる独自の構造を実現しています。一般には、てんぷの振動数が上がるほど、脱進機効率と呼ばれる動力の伝達効率は下がるとされています。その振動の速さに、がんぎ車とアンクルが追いつききれないためです。そこで、キャリバー9SA5では、「MEMS」技術で作られた複雑な形状のパーツを採用しシンプルな構成で組み合わせています。それにより、脱進機効率を飛躍的に高め、ツインバレルとの連動によって10振動でありながら、80時間の長時間持続を実現しました。

より安定した精度を実現した、グランドセイコー独自の「巻上ひげ」

キャリバー9SA5は、高度な解析技術と製造技術、匠の技の融合によって生まれたグランドセイコー独自の「巻上ひげ」を搭載し、より安定した精度を実現しています。この巻上ひげは、姿勢差が小さく、振り角が変化しても精度が狂いづらいという優れた特性を持ち、新たな解析技術のもと、8万通りを超えるひげぜんまいの形状の中から見出された最適な形状を備えています。

高精度を長期間、安定的に維持することを可能にした等時性調整可能な「グランドセイコーフリースプラング」

精度の調整には、緩急針のない「フリースプラング」方式を採用し、てん輪の側面にある4つのちらねじを回し、てん輪の慣性モーメントを調節することによって、その進み・遅れの調整を行います。緩急針のないこの構造によって、ひげぜんまいの耐久性が向上し、より高い精度を長期間、安定的に維持することができます。これは、長年にわたって蓄積してきた設計技術と部品の製造技術、職人たちの熟練の手業があってこそ実現した機構です。
グランドセイコーフリースプラングはひげぜんまいの末端を固定するひげ持ちを回すだけで理想的な等時性を実現できる機構を備えており、8万回に及ぶひげぜんまい形状のシミュレーションのデータを用いて、時計製造において長い間の課題に対するシンプルな解決策を見出しました。

慣性モーメントの大きいてんぷの搭載と持続時間の延伸を可能にした「ツインバレル」

キャリバー9SA5は「ツインバレル」によって従来の約2倍の高トルクを確保しながら、デュアルインパルス脱進機との連動によって80時間の連続駆動を実現しています。表輪列の歯車への負担を減らす構造を取ることで、部品の耐久性を確保しています。動力ぜんまいのエネルギーを十分に長時間確保できるようになったことから、従来よりも慣性モーメントの大きいてんぷを搭載し、より安定した精度を誇る10振動ムーブメントを実現しました。

新開発の日送りつめによって実現した「瞬間日送り機構」

9Sメカニカルムーブメント初の「瞬間日送り機構」は、新たに「可動式日送りつめ」を開発することで、より美しく瞬時にカレンダーを切り替えながら、日付修正時の実用性を向上させました。「MEMS」技術によって、複数のばねを組み合わせることで、部品耐久性を高めながら省スペース化を実現し、ムーブメントの薄型化に貢献しています。

快適なつけ心地をかなえる薄型ムーブメント

高精度と長時間持続を実現するとともに、装着性の向上を目指したキャリバー9SA5にとって、ムーブメントの薄型化を図ることは、最たる課題のひとつでした。技術陣は試行錯誤を繰り返し、「水平輪列構造」という新たな構造によりキャリバー9S85に比べて約0. 8mmの薄型化を実現させました。さらに、これまで以上の装着感を追求するべく、腕時計として完成した時の重心位置にもこだわりました。ムーブメントの底面からりゅうずの中心までの距離を従来よりも縮め、可能なかぎり裏ぶた側へ寄せることで、腕時計としての重心位置を下げ、より安定感のある腕なじみと快適な装着感を実現しています。
また、ムーブメントの薄型化は、デザイン面にも大きく寄与しています。ムーブメントの厚さに由来する制約にとらわれることなく、デザインの幅を広げ、豊富なバリエーションを生み出すことを可能にしました。

ブランドの美学を上質な感性価値へと昇華させたムーブメントの造形と仕上げ加工

ムーブメントの外観は、グランドセイコーならではの上質な感性価値を与えるべく、設計の構想段階からデザイナーが参画し美しさを極限まで追求しました。最たる特徴は、曲線を多用した温かみのある流線形を描く「受」のデザイン。この造形は、山の稜線やゆるやかな川の流れを映し出すべく考案されました。美しく時を刻み続けるムーブメントの動きがどこからでも見えるよう、受の分割の間を広く取り、大きくくり抜かれた回転錘をとり入れながら、美しい外観と実用性を両立させるべく、細部にわたって工夫が凝らされています。受の表面には、なだらかな波目模様、歯車の表面には、その1枚ずつに繊細な模様仕上げを施しています。さらに、ムーブメント側面には、梨地加工を施し、光を抑え、落ち着いたトーンに仕上げています。これは、美しいダイヤカットを施した受の稜線や端面、穴のまわりが放つシャープな輝きを、より一層際立たせるために凝らされた趣向です。こうして、グランドセイコーらしい品格と、これまでにはないメリハリのきいた上質な輝きをあわせ持つムーブメントが完成しました。

9Sメカニカルとは

約200点のパーツから構成される機械式時計は、パーツ精度がムーブメントの精度を左右する。
どこまでもシンプル。だからこそ、問われるのはパーツ製造技術と職人の加工技術。
グランドセイコーのマニュファクチュールとしてのイノベーションは、この9Sメカニカルムーブメントに凝縮されている。

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