スプリングドライブの機構
機械式の味わい + クオーツと同等の高精度。
それが、スプリングドライブの発想。
時計の駆動方式から、お話を始めましょう。
時計を動かす方式は、大きく分けて二つあります。
機械式(メカニカル)とクオーツです。
機械式は、ぜんまいを巻き上げ、そのぜんまいがほどける力で針を動かします。
高度な職人技が作り出すメカニズムの面白さと、作り手の顔が見える温かさ。
時を刻む音の中に、人の味わいが感じられます。
一方、クオーツは、電池で水晶を発振させ、モーターで針を回します。
最新のテクノロジーを駆使した正確さが特徴です。
スプリングドライブは、どうなのでしょうか?
機械式時計でもなく、クオーツ時計でもありません。
一言で言えば、「クオーツと同等の精度を持った機械式時計」となります。
ぜんまいの動力だけでクオーツと同等の精度を実現し、電池やモーターはもちろん、蓄電池さえ内蔵しない自己完結的な駆動システムなのです。
ぜんまいを使用しながら、平均月差±15秒(日差±1秒相当)※というクオーツと同等の精度。
メカニカルな技術とマイクロエレクトロニクス。その両者を兼ね備えているセイコーならではの独創的な機構です。
では、なぜこれほどまでの精度が可能になったのでしょう。
キャリバー9R01の場合は平均月差±10秒(日差±0.5秒相当)の特別精度になります。
スプリングドライブの機構
ぜんまい動力を電子制御で調速する。
それが、スプリングドライブの本質。
機械式時計の精度を制御しているのは、てんぷと呼ばれる調速機構の一部であるひげぜんまい。
温度変化によって伸び縮みする金属なので、少なからず精度に影響を与えています。
スプリングドライブは、この調速機構が機械式時計とは全く異なります。
動力はあくまでぜんまいですが、発電機とIC、そして水晶振動子からなる電子調速機構を採用したのです。
もう少し詳しく言えば、針を動かす輪列の先にも増速する歯車が続き、ローターがついています。
ぜんまいのほどける力はローターも回転させ、コイルに電流が生じ、水晶振動子とICを駆動させます。
ICは水晶振動子が発信する正確な電気信号とローターの回転速度を比較し、電磁ブレーキをかけたり外したりしながらローターの回転速度を制御しているのです。
また、輪列部のエネルギー伝達の効率化、低消費電力で駆動するICの採用などにより長時間のパワーリザーブを実現しました。
しかも、クオーツと同等の精度を保つという、これまでになかった新たな駆動システム。
それがスプリングドライブなのです。
スプリングドライブの機構
順を追って、わかりやすく解説しましょう。
これが、スプリングドライブの機構。
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ぜんまい
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輪列・針
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トライシンクロレギュレーター
回転錘の回転(またはりゅうずの巻き上げ)によりぜんまいが巻き上げられ、そのほどける力が唯一の動力源です。
ぜんまいのほどける力が歯車に伝わり針を動かします。モーターも電池も搭載していません。
ぜんまいがほどける力はローターも回転させます。これによりコイルに僅かな電流が発生し、ICと水晶振動子を駆動させます。同時にローター部には磁界が生じます。ICが水晶振動子の正確な電気信号をもとにローターの回転速度を検出し、電磁ブレーキをかけたり外したりしながら、ローターの回転速度を調整します。
上図は標準的なスプリングドライブの機構を図解したものになります。