永山祐子、「ALIVE IN TIME through the FIVE SENSES」で特別な時間を体験する
ブランドの誕生以来60年以上にわたって、たゆまぬ進化を遂げてきたグランドセイコー。そのクラフトマンシップや革新性を、“五感”を通して体感するイベント「ALIVE IN TIME through the FIVE SENSES」が、9月13日から15日までの3日間限定で東京・表参道のイベントスペースWALL&WALLにて開催された。東京を皮切りに海外にも展開予定のこのポップアップイベントを、同じく世界を舞台に活躍する建築家の永山祐子さんが体験した様子をリポート。自身でもグランドセイコーの腕時計を愛用する彼女は、“唯一無二の特別な時間が体感できる”と謳うイベントで、どのような時間を過ごし、何を感じたのか——。
五感を見つめ直す「ALIVE IN TIME through the FIVE SENSES」
そもそも五感とは、外界の情報をキャッチする重要なセンサーのようなもの。つまり、五感を豊かにすることは、日常を豊かにすることと同義と言える。今回、永山さんが訪れた「ALIVE IN TIME through the FIVE SENSES」では、五感を通じてグランドセイコーのクラフトマンシップや革新性を感じることができる、4つの特別なエリアが用意された。会場に足を踏み入れると、まず現れたのは「視覚」エリア。グランドセイコーのクラフトマンシップの根幹である精緻なパーツやムーブメントが、まるで水面に浮かんでいるかのように展示され、来場者の視線を釘付けにする。自然の源である水の揺らめきや煌めきをイメージした映像はもちろん、ブランドフィロソフィーである「THE NATURE OF TIME」の世界観に基づく演出だ。
「アクリル板に封入された時計の細かいパーツに驚きました。髪の毛ほどのミクロのパーツが並び、このたくさんのパーツが人の手によって組み立てられて一つの腕時計の心臓部となって動き始めると思うと、まるで一つの都市のようだなと思えてきます」
視覚エリアを後にした永山さんが次に入ったのは、暗室のような空間に独特な音が響き渡る「聴覚」エリア。ここは、グランドセイコー初のコンプリケーション機構「コンスタントフォース・トゥールビヨン」を搭載したKodo(鼓動)の刻音を、光と音で表現したインスタレーションが展開される空間。てんぷとコンスタントフォースが刻む16ビートのリズムを光の演出と調和させた没入空間で、チクタクと正確に刻まれる音を体内に染み渡らせるかのごとく、そっと目を閉じ、聴覚に神経を集中させる永山さん。
「機械的なのに音楽的なリズムで気持ちいいですね。建築設計においては、大体は音を制御することが多いのですが、あえて音を楽しむような場所をつくる場合もあるんです。せせらぎの音がするように川底の石の並べ方を工夫したり、さらさらと葉が擦れる音とか、お庭のつくり方で特に音を意識することが多いですね」
一つまた一つと五感が研ぎ澄まされていくのがわかる、と永山さん。続いて訪れたのは「触覚」エリア。ここは、光と陰の演出による空間のもと、グランドセイコーの腕時計を実際に装着することができるセクション。カウンターに並ぶのは、現在のグランドセイコーを代表する4つのモデルだ。白樺林をイメージしたダイヤルの「SLGH005」、諏訪湖の水面のようなダイヤルパターンが印象的な「SLGA021」、ストップウオッチ機能を搭載したグランドセイコー初のメカニカルクロノグラフ「SLGC001」に加え、ジェンダー問わず楽しめるミドルサイズのクラシックモデル「SBGX347」もラインアップ。ここで、タッチ&フィールを楽しむ永山さんに、好みの腕時計について聞いてみた。
「いままでは割とレザーストラップの腕時計を着けることが多かったんです。メタルブレスレットはなにか冷たい感じがするのかなって。でも実際にメタルブレスレットタイプのものを使ってみると、結構肌によく馴染むことがわかりました。実際に腕に着けてみると新しい発見がありますよね」
時の移ろいを味わう、食の新体験
「触覚」エリアで自分にぴったりの腕時計を身に着けた永山さんは、今回のイベントのハイライトとなる「味覚・嗅覚」エリアに移動。和食とコーヒーのスペシャルメニューを提供したのは『ミシュランガイド東京2023』で2ツ星を獲得した「傳」のシェフ長谷川在佑さんと、スペシャルティコーヒーをいち早く世界に広めた「KOFFEE MAMEYA」のバリスタ國友栄一さんだ。ゲストに振る舞われるのは「THE NATURE OF TIME」からインスパイアされた、ここでしか味わうことのできない特別メニュー。
1品目に供されたのは、「エチオピア ゲシャビレッジ オマ」を常温の水で13時間半かけて抽出したコールドブリューのコーヒー。2品目では、同じ豆を牛乳で低温抽出したミルクブリューと、トマトを練り込んだところてんとじゅんさい、パッションフルーツを合わせた一皿が提供された。3品目は、焼きなすを熟成させて炙った牛肉で巻き円柱状にし細かく刻んだねぎやみょうがを添えた一品に、フィルターで濾されたコーヒーとポン酢を混ぜ合わせた抽出液を注いだ革新的な料理と、濃いめの比率で抽出し20度まで温度を下げることで酸味やコクを際立たせ、食中に合う味わいに変化させたドリップコーヒーが登場。季節感と繊細さを大切にする和食と、長い時を経て多彩な味わいを生むコーヒーの未知なる融合は、グランドセイコーのクラフトマンシップや革新性をよく表現しており、永山さんにとっても “唯一無二の特別な体験”となったようだ。
「各感覚が研ぎ澄まされている段階で、コーヒーと掛け合わせた斬新なお料理を口にした時には、味に神経を集中させることができ、新しい発見がありました。それにしても、コーヒーとポン酢の組み合わせは意外でしたね。しかも美味しくて。まさに未知なる体験でした」
最後に、時計業界最大級の新作見本市「Watches and Wonders Geneva 2023」を再構成した展示スペースで、グランドセイコー各モデルのストーリーについてスタッフから解説を聞いた永山さん。自然の色や手触り、光と陰の移ろいなど、日本人の美意識や感性で腕時計の世界観を表現した、躍動感のある演出展示を楽しんだようだ。
「視覚から聴覚、触覚、そして味覚と嗅覚につながる4つのエリアでの体験を通して、自分の感覚がどんどん研ぎ澄まされていくのがわかりました。細かいパーツを見ようと目を凝らしたり、暗い空間で音を聴こうと耳を澄ませたり、人間が本来もっている感覚が磨かれる素晴らしいイベントだと思います」
多角的な視点でブランドの魅力を伝えるこのポップアップイベントは今後、海外にも展開予定。グランドセイコーのクラフトマンシップと革新性は、これからも進化を続け、多くの人々を驚かせていくに違いない。