Chef 庄司夏子
庄司夏子が創るシェフの未来、そして世界基準
庄司夏子が創るシェフの未来、
そして世界基準
2020年、「世界のベストレストラン50」が選ぶ「アジア・ベスト・パティシエ」に日本人女性として初めて選出された庄司夏子。彼女が重ねる時間には、女性シェフの理想的な未来への意志が込められている。
「あなたにとって時間とは?」。
この問いに庄司夏子はすかさず「命」と答えた。
「あなたにとって時間とは?」。この問いに庄司夏子はすかさず「命」と答えた。
食材の旬や鮮度にも、お客様と向き合える時間にも限りがあります。目に見える時刻、食材そのものが持つ時間、私やお客様のそれぞれが持つ体内時計。その全てを常に意識しています。
仕事において時間を正確に捉えるための大切なツールとなる腕時計だが、
プライベートの愛用においてはラグジュアリーな作品性も求めたいと彼女は言う。
仕事において時間を正確に捉えるための大切なツールとなる腕時計だが、プライベートの愛用においてはラグジュアリーな作品性も求めたいと彼女は言う。
グランドセイコーのようにアクセサリーとしても美しい腕時計を好みます。étéのお客様の中にも様々な腕時計を愛用して「最終的に行き着いたのがセイコーの腕時計」とおっしゃる方がいらっしゃいます。品質への絶対的な信頼と永遠のオリジナリティを兼ね備えた世界に通用するマスターピース。それは私自身が目指すクリエーションでもあります。
庄司は2015年、24歳で自らオーナーシェフを務める
フレンチレストラン「été(エテ)」を開業した。
20代の頃は「何とか生きていた」という感じ。あまりに一生懸命だったので、起業した頃の記憶も曖昧ですし、修行時代から起業当初頃までの世間の流行もほとんど分かりません。
庄司は2015年、24歳で自らオーナーシェフを務めるフレンチレストラン「été(エテ)」を開業した。
20代の頃は「何とか生きていた」という感じ。あまりに一生懸命だったので、起業した頃の記憶も曖昧ですし、修行時代から起業当初頃までの世間の流行もほとんど分かりません。
開業以来、24時間365日のほとんどをétéに捧げている。そう事も無げに彼女は言う。
彼女の朝は顧客から届くメッセージの確認で始まる。
開業以来、24時間365日のほとんどをétéに捧げている。そう事も無げに彼女は言う。彼女の朝は顧客から届くメッセージの確認で始まる。
自宅からお店に向かうまでの時間は、打ち合わせに充てたり、新たなインスピレーションを得るために美術館や最新のファッションを見て回ります。店に入ったらケーキのお受け渡しや仕込みのチェック、その後はひたすら料理の仕込みを。営業中はお客様と向き合うことに集中して、閉店後の時間は打ち合わせや翌朝の確認、そしてお客様との交流に充てています。何時もお客様の事とお店の事が頭にあります。
étéのレストラン営業は一日一組限定。
開業当時から今日まで変わらぬスタイルで予約は常に困難だ。
顧客には第一線の経営者や多くのセレブリティも名を連ねている。
étéのレストラン営業は一日一組限定。開業当時から今日まで変わらぬスタイルで予約は常に困難だ。顧客には第一線の経営者や多くのセレブリティも名を連ねている。
お客様により良い時間を過ごして頂ける最良のスタイルと信じて続けています。私の中では他の選択肢がありませんでした。
étéはパティスリーとしても高い人気を誇る。
正方形の箱に季節のフルーツを贅沢に配する「Fleurs d’été (フルール・ド・エテ)」は、
やはり常に予約困難なラグジュアリーなケーキだ。
フルーツ、タルト、クリームに保存料を一切使わない生花のようなケーキの発明は、
まさしく世界に通用するマスターピースを目指す彼女の代名詞となった。
étéはパティスリーとしても高い人気を誇る。正方形の箱に季節のフルーツを贅沢に配する「Fleurs d’été (フルール・ド・エテ)」は、やはり常に予約困難なラグジュアリーなケーキだ。フルーツ、タルト、クリームに保存料を一切使わない生花のようなケーキの発明は、まさしく世界に通用するマスターピースを目指す彼女の代名詞となった。
日本は味のレベルが高い。単に「美味しい」のは私にとって「当たり前」。より飛び抜けた美味しさを提供し、なおかつ一度目にされたお客様の脳裏から焼き付いて離れないような存在となるにはどうすればいいのか?と熟考を重ねました。「Fleurs d’été」を思い付いた時は一刻も早く世に出したかったのですが、フルーツをたくさん扱うお店で修業をして、基礎的なフルーツカットの技術を学び、箱のスタイルも徐々に突き詰めて、実現までにおよそ二年をかけました。
一秒でも早くétéの知名度を上げたかった。しかし、がむしゃらに進むだけではなく、
自身を客観視した上での戦略的なオペレーションを心掛けてきた。
一秒でも早くétéの知名度を上げたかった。しかし、がむしゃらに進むだけではなく、自身を客観視した上での戦略的なオペレーションを心掛けてきた。
お店の名前と自分の名前を、簡単に、同時に覚えてもらいたかったので、短くてどなたにでも読んでいただけるよう「été(エテ)」とネーミングしました。ケーキも早く認識してもらえるように、取り扱われる全ての雑誌で、一年を通して同じマンゴーのケーキを載せました。ラグジュアリーブランドや村上隆さんをはじめとするアーティストとのコラボレーションは、全て自分からアプローチを仕掛けました。競合コンペの際はケーキの実物を持参して「明日にでもこれが作れます」とアピールしました。自分の作った料理を食べて下さる方の笑顔は、もちろん今でも最大の原動力。しかし、私は経営者としてスタッフや彼らのご家族への責任がある。それを全うするためには一分一秒でも無駄にしたくなかったし、能動的なアクションを起こさなければと思いました。チャンスは黙って待っているだけではやって来ない。
昨年(2020年)には「世界のベストレストラン50」が選ぶ
「アジア・ベスト・パティシエ」に日本人女性として初めて選出された、
それは日本の風土が持つオリジナリティを見つめ直す機会にも繋がった。
昨年(2020年)には「世界のベストレストラン50」が選ぶ「アジア・ベスト・パティシエ」に日本人女性として初めて選出された、それは日本の風土が持つオリジナリティを見つめ直す機会にも繋がった。
選出理由のひとつは「誰もが見たことのない作品を生み出したこと」、もうひとつは「日本のフルーツを使い、日本の四季を感じさせたこと」でした。Fleurs d’étéはマンゴーのみ国内産と海外産をミックスしていますが、他のフルーツは100パーセント国内産。香りも見た目の良さも全てレベルが違うからです。豊かな四季のなかで育まれる日本のフルーツはまさに宝石。世界から見た日本の利点について改めて実感させられました。
こうしたアワードの評価は彼女にとって大きな意味を持つという。
日本とヨーロッパを比べると、シェフの社会的地位、雇用環境、賃金はどれを取っても大きな差があります。特に女性については、「早く結婚しなければ」とか「早く子供を産んだほうが」と言われがち。家事だって欧米では人を雇って任せるという手段があるのに、日本では「女性の仕事」という風潮がまだまだ強いように感じられます。でも、それらは全て古い世間の多数決だと思う。多数派か少数派という二択ではなく、私は私だけの選択肢を作りたい。
彼女は“夢”という言葉を好まない。
彼女にとってプランとは必ず具体化すべき現実的な対象であるからだ。
彼女は“夢”という言葉を好まない。彼女にとってプランとは必ず具体化すべき現実的な対象であるからだ。
日本にもっと女性のシェフが増えて欲しいし、私自身、そう遠くない将来に女性シェフの雇用環境を改善していけるようなロールモデルとなりたい。アワードの評価やタイトルは、その実現のための重要な一歩と捉えています。
成功の姿というものが分からないと彼女は言う。
「まだ成功もしていないし、ずっと成功なんて認めないと思う」。
しかし「10年後の姿は?」という問いには、やはりすかさずこう答えた。
成功の姿というものが分からないと彼女は言う。「まだ成功もしていないし、ずっと成功なんて認めないと思う」。しかし「10年後の姿は?」という問いには、やはりすかさずこう答えた。
日本のナンバーワン女性シェフとなって、その先の世界を目指しているはずです。
Interview
Text: 内田正樹 Masaki Uchida, Photos: 小野真太郎 Shintaro Ono, Producer:湛野麻衣子 Maiko TannoMovie
Producer:秋山直樹 Naoki Akiyama, Production Manager:國谷陽介 Yosuke Kunitani,Director:松川正人 Masato Matsukawa,
Camera:磯部義也 Yoshiya Isobe, Light:岩本洋三 Yozo Iwamoto,
Hair:ASASHI(ota office), Make-up:Sada Ito for NARS cosmetics (donna),
Colorist:内藤亜莉紗 Arisa Naito, Online Edit:吉田宏治 Koji Yoshida(PTHREE),
Production:原宿サン・アド Harajuku Sun-Ad